なまずの味は、うなぎに似ている。
そんなことをテレビで聞いたことがある。
その時は、「おなじ川魚だしそうなのかな」と思ったのだけど、最近、なまずを食べた友人の話を聞いたところ、ちがうことが分かった。
「あまり似ていない。うなぎよりあっさりしている」と言われたのだ。
それからというもの、「なまずって、どんな味なんだろう」と気になるようになってしまった。友人と話をしてしまったせいで、変に心にひっかかりができたのだ。
「この心のモヤモヤを解消したい」
その思いが強くなり、なまずを食べに行くことにした。
行先は、なまずで有名な板倉町にある「川魚郷土旬彩うおとし」という店だ。
なまずで有名な板倉町について
板倉町は、群馬の東の端にある。
もうちょっと行けば茨城、というところにある町だ。
利根川や渡良瀬川など大きな川に囲まれたりしていて、水郷の町と呼ばれている。(かつては大きな沼もあった)
水に囲まれた町なだけあって、かつてはフナ、コイ、ナマズ、ドジョウ、ウナギなど多くの川魚が捕れた。ただ、いまは、かつてほど取れないらしい。
川魚を捕っていた人は主に農家の人で、専業ではなく、副業でやっていた。
また、副業でやっていた農家の大半は、水害などで農作物が安定して取れない人たちで、暮らしていくために仕方なくやっていたとのことだ。
うーん、食に歴史ありって感じだ。
入店すると、なまずが出迎えてくれる
店に入ると、予定外の仕事を振られたサラリーマンのような顔をしたなまずが出迎えてくれた。それにしても、このなまず、自分にそっくりで気になる。
案内され、席に座り、メニューを見ていたところ、なまずの刺身、てんぷら、蒸し料理、さらにうなぎまでセットになっているコースを見つけた。
「うおとし二の膳」、という4070円のコースだ。
これだけ料理がそろっていることもあり、お値段もまあまあするが、せっかくなのでこのコースを頼むことに。
まずは、刺身。めちゃくちゃに透き通っている。
口に入れてみると、かみ始めはかなり弾力性を感じる。
でも、最初の弾力層が終わると、さっくりとかみ切れる。
刺身というとタイやエビのぷりぷり系、トロのようなとろける系があるが、どちらにもあてはまらない。はじめての食感だ。
あと、川魚だから、「くさみがありそうだな」と偏見をもっていたけど、全然くさみがない。かなり丁寧に処理されてるのが分かる。
友人に聞いていた通り味はあっさりしているが、ほのかに旨味が口の中に広がっていく感じだ。おいしい。
次は天ぷら。
あまりにもでかい。ハシで持つとその重さを支えきれずに指がプルプルと震える。ケンタッキーくらいの重さがある。できれば手づかみでいきたいくらいだ。
食べてみると、これも新鮮さがある。
揚げ物なのにみずみずしい。
そして、あっさりしているが、あっさりの中にほんのりと奥深い旨味がある。
これだけあっさりしてるのに、濃い味がスタンダードな群馬の中で郷土食になっているから不思議だ。
なまず料理、最後は蒸し鍋。
これも食感が独特だ。
なんというかぐんにゃりしている。
こんにゃくのように弾力性のある層、脂身のすくない白身魚のやわらかい層の2層構造だ。独特な食感だけど、これもうまい。
コースのシメはうなぎだ。最高に、うまい。
ここまで食べたなまずと比較すると、脂とそれにともなう旨味の差がよく分かる。
うなぎの方が脂が多くて、分りやすい味だ。
一方で、なまずは脂があまりない分あっさりしていて、旨味がちょっとわかりにくい。でも、みずみずしくて上品な味わいがある。
まとめ
なまずは、なまずの味だった。うなぎではない。
はじめて食べるなまずもよかったけど、郷土食の歴史もおもしろかった。
今度は他県の人を連れて、店に訪れたい。
・住所:群馬県邑楽郡板倉町板倉903
・電話番号:0276-82-0054