
ここ数年、サウナはブームになっている。
都内の人気店では、待ち時間が発生することも多く、さらにあたらしいサウナ専門店もどんどんオープンしている。
しかし、群馬にはブームが浸透していない。
都内のような専門店はなく、新しいサウナができたとしても、宿泊を前提とするホテルや旅館に備えられていることがおおいため、群馬県内で気軽にサウナを満喫できる場所は、まだまだすくない。
そんなサウナ文化のうすい群馬に、専門店がオープンする。
そして、このサウナを手がけるのは、「大好きなサウナを作りたい」という想いを持って群馬に移住した、ひとりの青年だ。
「だれも体験したことのない最高のサウナを作りたいんです」
はつらつとした声で語る若林 優貴さんに、サウナの支配人になるまでの軌跡、そして、どんなサウナを作ろうとしているのか、話をうかがった。
きっかけは出張。渋谷のサウナで感動して、サウナ作りを志した
若林さんが出張で東京を訪れたある日のこと。仕事を終えてむかった池袋のスパ施設での体験が忘れられないものになったという。
「タイムズ スパ・レスタのサウナと水風呂に入ったとき、『すごい!!』と感動しました。ふわふわとした気持ちのいい浮遊感をはじめて味わったんですよね。それからサウナにハマりました」
サウナにすっかり魅了された若林さんは、それからというもの、全国のサウナ店やアウトドアサウナ(自然に囲まれた小屋で体験できるサウナ)を訪れるようになる。
あるときは、100℃の暑いサウナ、あるときは山の中にあるログハウスのサウナ。
各地のサウナを堪能していく内に、若林さんの「サウナが好き」という思いはどんどん深まっていき、次第に「自分でもサウナを作りたい」と考えるようになった。
そして、若林さんは人生において大きな決断をする。
「なにかをやるなら今だ。大好きなサウナを自分の手で作ろう!!」
ほどなくしてサウナ作りに適した物件を群馬に見つけると、若林さんは会社を辞め、縁もゆかりもない群馬に移住した。
群馬に移住し、アルバイトと熱波師の活動をはじめる

群馬に移住した若林さんは、サウナ作りと並行して2つのことをはじめた。
ひとつは、スーパー銭湯施設でのアルバイト。受付や清掃などの業務を行いながら、施設の運営や業務のノウハウも学んでいる
もうひとつが、熱波師としての修行。
熱波師とは、サウナの中にある熱々のサウナストーンに水をかけて発生した熱い水蒸気をタオルやうちわでお客さんに飛ばす職人のことだ。
熱波師が、ぶんぶんとタオルを振りまわし、熱波をお客さんに届けるアウフグースは、各地のサウナ店で人気のイベントになっている。
若林さんは、あたらしく作るサウナで、「自分でもお客さんにアウフグースを行いたい」という思いから熱波師になることを決めた。
「まず、横浜にある『ファンタジーサウナ&スパおふろの国』というお店で熱波師のセミナーを受けました。ここではアウフグースの基本やタオルまわし、お客さんとのコニュニケーションのとりかたを学ばせていただきました」
「つぎに、熱波師であり、講師としても活動されている『みんなの増本』さんから、パフォーマンスについて学ばせていただきました。増本さんは、埼玉にある『ザ・ベッド&スパ 所沢』というお店でアウフグースの講習をひらかれていて、YOUTUBEでも動画配信をされています。講習を受けたり、動画で勉強したりすることで、アウフグースの技術をあげることができました。でも、まだまだです。もっともっと技術を磨いていきたいです」
若林さんの熱波師としての名前は、“ねっぱやし”。もちろん苗字由来の名前だ。
サウナ作りを開始するも苦難がつづく

群馬に移住してから、休む間もなくサウナ作りに励んできた若林さん。
ひたむきに夢の実現へと取り組んでいたものの、はじめてのサウナ作りは、思った以上に困難が大きかったという。
「ゼロから何もわからない状態でサウナ作りを始めたので、本当にきつかったです。お金がどれくらいかかるかも分かりませんでした。建設会社や内装工事を請け負ってくれる会社もなかなか見つかりませんでした。会社の設立もロゴ作りも手探りでした。分からないこと、うまくいかないことだらけで、つらかったです」
「『本当にサウナを作れるのかな?』という不安も強くて、立ち止まりそうになることもありました」
サウナ作りのプレッシャーで押し潰されそうな状況で支えになったのが、サウナを通じて出会った人々の応援だという。
「サウナを通じて出会った人や熱波師の仲間が、会うたびに応援してくれるんです。最初は、プレッシャーも感じていました。ただ、いまは、純粋に応援してくれる人たちの期待に応えたいんです」
サウナ作りを1歩ずつ前に進めていく若林さんは、クラウドファンディングにも挑戦する。
クラウドファンディングへの挑戦とこれから
サウナ作りの骨子が固まり、予算や工事、オープンまでの道筋が経った2021年12月。
若林さんは、サウナ作りで不足する予算を補填するために、クラウドファンディングにチャレンジした。
売りは、ストーブで薪を燃やす熱で部屋をあたためる薪サウナ。
薪サウナは、心地のいい木の香り、パチパチと薪がはじける音、燃える炎を眺めながら、やわらかい熱で身体の芯まであたたまることのできる極上のサウナだ。
この薪サウナをメインのコンセプトに据えて、木造の樽型サウナであるバレルサウナ、2種類の水風呂、外気を浴びながら休憩できるスペースを揃えたサウナを作るとして、クラウドファンディングがスタートした。
途中、法律の関係でバレルサウナがお店に導入できないと判明するも、クラウドファンディングは募集終了まで17日を残して達成。
目標達成後も、支援者、支援金額を増やし、当初の目標金額を大幅に越え、成功に終わった。
クラウドファンディングの成功で、これから店舗を作り込んでいくことになる。
これまで非日常だった薪サウナを日常にしたい

「これまで遠征することでしか味わえなかった薪サウナ。『毎日体験できたらうれしいだろうな』と思い、サウナ作りをはじめました。サウナって、家の近くにあるお店、いわゆるホームサウナが重要だと思うんです。毎日のサウナが、とても気持ちのいいサウナになれば最高ですよね」
「毎日、最高に、気軽に、ととのうことのできるお店を作りたい。そんな思いで、施設の名前を『毎日サウナ』にしました」
毎日サウナがオープンするのは、2022年の春。
若林さんは、非日常だった薪サウナを日常にするという夢を抱いて、いまもサウナ作りに奮闘している。

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