発達障害

「いまの職場は合っている」。ホワイト企業に合わなかったADHD当事者の働き方

発達障害を抱える人にとって、頭を悩ますのが働くことだ。

特性によって向き、不向きがはっきりと出るので、自分に合った環境で働ければ、続けられるし、合わない環境であればミスやコミュニケーションの相違から、人間関係も悪くなり、最終的に退職することになる。

もちろん職場の環境に合う合わないというのは発達障害の人に限った問題ではない。

ただ、発達障害を抱える人は、脳機能の働きの強弱が他の人より大きい分、できることとできないことの差が大きくなる。

ADHDを持っている僕もできることとできないことの差が大きく、これからの働き方について「どうしようかな……」と悩んでいる。

業界を変えることを視野に入れながら、転職活動したいと思っているのだが、ふと疑問が出てきた。

「他の発達障害の人はどうやって仕事しているのだろうか?」

発達障害といっても、送ってきた人生や発達特性によって、困りごとはまったく異なる。

でも、同じ発達障害を抱えている人が、どのように仕事をして生きているのかを知ることは、自分の生き方を考える上でも参考になる。

そんなことを思い、発達障害を抱えている人達に仕事について聞いてみようと思った。

今回、お話を伺うのは、群馬に住むツイちゃんさん。

高校を卒業して入った工場を退職し、転職先の小売を辞めた後に、ADHDであることが発覚した。現在はパソコン関係の会社で障害者雇用で働き、動画制作や編集をメインに仕事をしている。

「いまの仕事と環境は私にあっているんです」

そう語ってくれた彼は、どのように仕事を見つけて、どのようにやっていきたいと考えているのだろうか。

「ホワイト企業」が、まったく合わなかった

ツイちゃんさんは高校卒業後、年間休日が120日あり、残業も10〜20時間程度の製造業に就職した。

人間関係でもわからないことを聞きにくい雰囲気もなく、働く環境としてはかなりよかったが、配属になったのが品質保証部門で、ここでの仕事が合わなかったという。

「待遇はすごいよかったんですよ。でも、特性と致命的に合わなかった」

品質保証という部門は、会社にもよるが、製品のデータを細かく取り、書類にまとめたり、クレームが起こった際の対応をしたり、あとは社内の内部監査をしたりする部門だ。

製造業におけるゴールキーパーの役割を担っており、最後の門番である以上、ミスに対しても厳しい。細かいミスが発生しがちなADHDとの相性は悪い。

「ミスを重ねるうちにどんどん人間関係が悪くなってしまって。それでストレスも溜まっていって限界になりました」

会社に勤めて2年が経った頃、ミスが原因で職場の人との関係性が悪化してしまい、ある日、メンタルは限界に達してしまう。

気分が沈み、なにも考えられなくなり、会社にいることができなくなったのだ。

そして、昼休みに会社から出ていき、心療内科に向かったところ、適応障害と診断された。

その後、2週間休職し、会社に復帰せずに退職した。

なんとなく入社した販売の仕事も合わなかった

工場を退職した後、ツイちゃんさんは通信機器の販売店で働くことになった。

「求人を見ていて、なんとなくいいなと思って入社しましたが、この行動はよくありませんでした」

すこし笑いながら当時のことを話してくれたが、これもADHDの気になったものに衝動的に飛びついてしまう特性のひとつだ。

販売店というと、目の前の接客、雑務を交互にやっていくマルチタスクの仕事でADHDと相性が悪い印象がある。

でも、ツイちゃんさんの働いていた店はそうではなかったという。

「お客さんがこないので暇でした笑。スマホばかりいじってましたが、それが辛かったです」

暇で手持ち無沙汰だと、ADHDの場合、そわそわしてしまって、ストレスが溜まってしまう。このストレスも人にはあまり理解されないが、当事者にとってはかなり大きい。

そして、日々ストレスを溜める中、上司からの言ある葉をきっかけにツイちゃんさんは会社を辞めることになった。

「お客さんの接客をしていたんですが、うまく売れないところを偉い人に見られて、接客に行くなと言われました。契約数も上げられない、なにもできない、もういいやと思って、退職代行をつかって辞めました」

気持ちが折れる時は、嫌なことが積み重なっている状態で、さらに嫌な気持ちを後押しするできごとに遭遇する時である。

ツイちゃんさんも、勤務体系や人間関係でのストレスが積み重なった状態で、上司のひと言で心が折れてしまった。

ふたたび心療内科の扉を開き、ADHDという診断が降りた。

トライアル雇用で、動画制作の会社と出会う

その後、ツイちゃんさんは、ストラテラを服用しつつ、ハロワークのトライアル雇用を活用して、パソコン関係の会社に入社。

ハロワークのトライアル雇用とは、就職経験の少ない人や空白期間が長い人などを対象に実施されている就業サービスのひとつである。3ヶ月間ある企業で働いてみて、企業側が雇用したいと思い、自分も働きたいと思えば、そのままその企業に就職することができる。

「私がトライアルを受けていた企業には障害者雇用がありませんでしたが、あたらしく枠を作ってもらって障害者雇用にしてもらいました。給料は一般雇用と同じです」

トライアル雇用でうまくマッチングしたこともあり、給与面は悪くない条件で働けている。

また、入社後、主に動画撮影・編集の仕事に携わることになったが、これがツイちゃんさんの特性や性格とマッチしていた。

仕事で行う動画撮影も外に出て行うことなので暇にもならないし、なにより自分でなにかを作ることが楽しく、意欲的に仕事に取り組めているという。

「いいところに巡り会えてよかったです。あとは今の会社でできることをひとつずつ増やしていきたいです」

ADHDにとって、仕事で興味の向くことができるのは大きい。

興味のないことだと、仕事中に眠くなったり、この世から消えてなくなりたいという思いが湧いてくることもあるからだ。

逆に、仕事で楽しいと思うことに出会えると、エネルギーが湧いてくるようになるので、色んなことに積極的になることができて、人生そのものが前に進むということもある。

また、動画撮影と編集の楽しさに気づき、プライベートでも自分のカメラを買い、友人と撮影のサークルを作って活動するようにもなったという。

▲ツイちゃんさんの立ち上げた映像サークル

「将来的にはコンテンツ制作をパッケージングで受注したいですね。実績ができたら会社にも報告して、会社での仕事の幅も広げていきたいです。」

「このインタビューの後もサークルで請け負った撮影のロケハンに行くんですよ」

そう話すツイちゃんさんのやわらかい表情からは、「楽しみつつ未来へ歩んでいこう」というエネルギーがじんわり滲み出ていた。

ABOUT ME
たんぺい
群馬在住のインタビューライター。ローカル・生きづらさ・発達障害・サウナをテーマに記事を書いています。こってりした食べものとサウナが好きです。

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